考察:大衆政治(5)
「大衆は、答えをすでに自分で持っている」
大衆というのは、受け入れてもいい回答が限られている。
どんな複雑な問題が起こったとしても、あらかじめ自ら用意している回答の中のどれかで解決することしか、認めない。
社会問題をちゃんと分析して最適な解決策を実施するのに、大衆の同意はない。大衆の同意内容は、あらかじめ決まっているからである。
例えば、「税収を増やすために減税する」なんていうのは、その中に入っていない。
安売りのスーパーが、定価売りのデパートを駆逐したというのに。売値を安くすることで、販売数を多くして、つまり、売値の下げを上回る販売数の増加で、逆に利益を上げるなんて、理解してもよさそうなものであるが、ダメなのである。
グローバル化が進むと、法人税が高いところに本社を置くよりも、安いところに本社を置いたほうが、得であるので、法人税の高い国から企業はどんどん離れてしまい、法人税の安い国に会社が集まる。そして、法人税の安い国が栄える。
けれども、法人性を安くすると、大衆はぶりぶりに怒るのである。自分の用意した回答のリストには、そんな逆説的な複雑なものはないからである。
結果、国から企業を追い出し、もしくは、国に居残ってもらうために、法人税以上の補助金を出す羽目になるのであるが、そんな複雑なことは、認識不能である。
エコ家電、エコカーで減税すれば、単純に喜ぶだけなのである。
こうして、国はどんどん衰えていく。