薄い竜馬伝(最初っから竜馬)


偽手形の香川照之さんの熱演に見とれて、うっかり見逃す所だった。
脚本家は、司馬さんの竜馬を批判して、「竜馬は最初っから竜馬だったはずじゃない」って言っているが、剣術については、最初っから竜馬である。

竜馬の江戸行きの目的は剣術の稽古である。
剣術が優れているので、スーパー特待生として、江戸に剣術留学するのである。
しかるに、この剣術については、最初っから竜馬である。
さいころから剣術の稽古をして、めきめき頭角を現していくなんてところは、スポーツものでは、そこだけで長編小説になるところであるが、すっ飛ばしている。
そして、剣術の強さは
「ワシは、おまいら全員切り臥せれれるがよ」って、説明せりふなんか、言わせている。
剣術は竜馬の核だろう。
千葉道場に行って道場主の娘と恋仲になるのも、剣術の腕があってこそである。
近くの道場の桂小五郎と親しくなるのも、お互いの剣術の腕を認め合ったのが、きっかけであろう。

剣術がうまいのに、あえて、拳銃を持つ竜馬の気持ち(うまいといっても10回やって10共勝てるわけではない、3本勝負なら、2勝1敗で勝ちであるが、実戦では、1敗で命取りである。また、浅い浅いなんていっても、血は出るし、指の1本も飛ばしちゃっている。なので、拳銃があれば、拳銃を使うべきなんてあたり)なんかは、きっとすっとばすのであろう。

商人としてのセンスと剣術家としての才能をすっとばして、竜馬を描こうっていうんだから、なにを、期待すればいいのか?

役者の好演熱演、時代考証の見事さ、だけでも、確かに見る価値はある作品ではあるが。