馬鹿たちがする攻撃
「injure」という言葉がしっくりくるのであるが、日本語には知らない。
おとといテレビを見た。
生まれつき右手の肘から先が無い女の子のドキュメントである。
右手に最新の義手をつけて、バイオリンを演奏するまでになるのであるが、もっと小さいころ。幼稚園か保育園の年少さんのころであろう。夏なので、半袖でいると同級の子供に
「手が無い」
といって、からかわれる。
そこで、近所のそういった子供のおかあさんからの申し入れである。
「長袖を着せたら」
というものである。
肘の所でちょん切れている右手が露出しないので、からかわれないだとうという思い付きだからだろうが、これが「馬鹿のする攻撃」である。
長袖を着ても、手が無いことは明白である。からかいは止まらない。
それよりもなによりも、手が無いことは隠さなきゃいけないことだと、脳みそに刻み込まれてしまうのが、最も有害なことである。
長袖を着せてしまっては、今のように立派にはそだたなかったはずである。体の傷以上の大きな傷を心に負ってしまう。
この子の母親は自分の子にこれ以上の傷を負わせないために、断固この攻撃を跳ね返す。
「夏は暑いから半袖でしょ」
ここからが、ドキュメンタリーの始まりなのであるが、主題は攻撃の方である。
馬鹿たちはたくさんいるので、攻撃は数の攻撃である。
そのうえ、なにしろ、馬鹿であるので、攻撃している自覚が無い。それより、その人のためだとか、これが正義だと確信がはいるので、自爆テロのように強力で恐ろしい。